青柏祭の歴史と、能登の地に曳き出される巨大「でか山」の迫力
能登の地に響く祭りの鼓動:青柏祭(せいはくさい)と「でか山」
石川県七尾市で毎年5月に行われる青柏祭は、能登地方を代表する祭りの一つです。この祭りの最大の見どころは、高さ12メートル、重さ約20トンにも及ぶ巨大な曳山、通称「でか山」が、狭い市街地を練り歩く壮大な光景にあります。でか山が建物や電線すれすれを進むさまは、見る者に圧倒的な迫力と感動を与えます。本記事では、この青柏祭の歴史や文化的背景、そして祭りの中心である「でか山」の魅力に迫ります。
悠久の歴史と神事としての意義
青柏祭は、大地主(おおとこぬし)神社の例祭として古くから伝わる祭りです。その起源は明確には定かではありませんが、室町時代後期には既に曳山が登場していたという記録があり、500年以上の歴史を持つとされています。祭りは、五穀豊穣や町の繁栄を祈願する神事として、地域の人々にとって精神的な支柱であり続けてきました。
かつては上町、魚町、府中町の三町がそれぞれでか山を曳き出し、神事として神前に奉納していました。この伝統は現代にも受け継がれており、三町が交代で当番を務めながら、祭りの中心を担っています。祭りの準備から本番、そして片付けに至るまで、町内の人々が一丸となって祭りを支える姿は、強い共同体意識の表れと言えます。
祭りのハイライト:圧倒的な存在感の「でか山」
青柏祭の主役である「でか山」は、単なる飾り物ではなく、高度な木工技術と装飾の粋を集めた移動式の芸術品です。能登ヒバなどの木材を使い、釘を一本も使わずに組み立てられる巨大な車体は、そのサイズだけでも見る者を圧倒します。
でか山の上部には、歌舞伎の場面などを再現した迫力ある人形が飾られます。これらの人形や装飾は毎年新調されることもあり、細部までこだわり抜かれた職人技が光ります。夜には提灯が灯され、昼間とはまた違った幻想的な雰囲気を醸し出します。
祭りの見どころは、この巨大なでか山が、狭く曲がりくねった町並みを曳き回される様子です。数百人の曳き手たちが力を合わせて山を引き、時には数センチの隙間を縫うように進んでいきます。特に、90度向きを変える「辻回し」は、祭りの最もエキサイディングな瞬間です。車輪の下に笹や竹を敷き詰め、てこの原理を応用して方向転換を行う様は、まさに圧巻です。曳き手たちの熱気あふれる掛け声と、祭囃子の力強い音色が一体となり、町全体が高揚感に包まれます。
地域に根差す祭りへの思い
青柏祭は、単なる観光イベントではなく、七尾の人々にとって自らのアイデンティティと深く結びついた祭りです。幼い頃から祭りの準備を手伝い、青年期には曳き手としてでか山を引き、年を重ねても祭りの運営に関わるなど、世代を超えて祭りが受け継がれています。
でか山を守り、曳き回すことは、先人たちから受け継いだ誇りであり、未来へ繋ぐべき責任であると、地域の人々は強く感じています。特に近年、能登地方を襲った震災からの復興を目指す中で、この祭りは地域の絆を再確認し、復興への希望を分かち合う場としての意味合いも増しています。
結び:未来へ繋がる能登の宝
青柏祭は、その巨大な「でか山」が持つ視覚的なインパクトに加え、長い歴史の中で培われてきた神事としての重み、そして地域の人々が一体となって祭りを守り伝える情熱に満ちています。でか山が町を練り歩く姿は、能登の力強さと、困難に立ち向かう人々の精神力を象徴しているかのようです。この祭りが、これからも能登の宝として、多くの人々に感動を与えながら未来へと受け継がれていくことが期待されます。